恋人が殺された挙句、容疑者にされてしまった主人公イグ(ダニエル・ラドクリフ)。
マスコミに追い回され、町の人からは蛇蝎の如く忌み嫌われ、まったくリアルはクソゲーだぜ、と思っていたら、ある朝、頭に角が生えていた。
なんじゃこりゃあ。
「ホーンズ 容疑者と告白の角」
(2013年/アレクサンドル・アジャ監督)
状況的に『やっぱりあいつは悪魔だ!』とか言われそうなものですが、誰もイグの角を見ても驚かず。
それどころか角を見た人は心に秘めた本心を次々イグに告白。
『(自分の子供を)殴りたい』『ママなんか燃やしてやりたい』『(母親から)あんたとは永遠に縁を切りたい』などなど。
何故か角のことも告白のことも喋った本人の記憶からは消えているという不思議仕様。
何がどうなって…まてよ、この能力を使えば真犯人を見つけられるんじゃないか…。
という恋愛ファンタジー&ミステリーなのですが、勘のいい人なら登場人物が出そろった時点で犯人が分かります。なので犯人探しはちょっと冗長。
後半、使い魔(?)として蛇軍団登場。一気に復讐かと思いきや、思わぬブレーキ。
う~む。1回返り討ちに遭うのは神話の構成としては正しい(死と再生という通過儀礼)のですが、やっぱ一旦ギア入れたら駆け抜けてくれないとテンション下がります。
殺された彼女の心情が明らかになる終盤とか“いい話”ではありますが復讐譚としてのカタルシスはゼロ。
何故角が? とか、何故告白? なんて事は取りあえず無視(愛の奇跡とか何とでも折り合いはつく)。
登場人物の車のプレートが聖書の一節を指している(イグのナンバーなら2036LUKでルカによる福音書20章36節、友人リーの車なら2017EXSで出エジプト記20章17節)ようで、角やら蛇やらにもキリスト教的意味合いがあるのでしょうが、取りあえず無視します。
原作はキングご子息ジョー・ヒル。原作ものに文句を言っても仕方がないのですが、多少お話が破綻してもいいからアジャ監督にはもちっと突き抜けた作品を撮って欲しいなあ…。