
『前へ進みます。今日が俺の明日です』
南部贋作が育てた男、アラガキとジョー。
『前のめりになるな!後ろに逃げるな!前に5、後ろに5だ。今がどんなに辛くてもその姿勢さえ崩さなけりゃ必ずおめえの明日はくる。明日のため…明日のためだぜアラガキ』
明日のため…それは贋作とアラガキを支える言葉でした。
アラガキvsジョー。男劇場開幕。
試合開始。アラガキの猛攻。テクニックの差は歴然。タオル投入を考える贋作。だが、
『俺達の賭けに途中下車なんかねぇ。だろ?』
力の差を埋めるためにジョーのとった戦法は…基本。
『前に5、後ろに5』
『クソッ…何考えてやがんだ』
『ジョーはおっちゃんのやり方で勝ちたいんだよ』
贋作の眼前でジョーを壊す…目的は復讐…いや違う。アラガキとの闘いから“何か”を感じ取るジョー。
『確かに今までの相手とは比較にならねぇ。けどヤツは俺と同じ。勝つためにリングに立ってる。だったら逃げるわけにはいかねぇだろ』

拳(こぶし)は言葉。拳で問う。拳で応える。

理解。共感。嗅ぎ取る同族の匂い。
アラガキの義足(正確には義足を支える生足結合部)は既に限界。棄権によるTKO。ド派手なKOシーンだけが試合じゃない。こんな幕引きがあってもいい。

『すまなかった』
『謝らなくていい。気づかないと思ったか?お前が言い出さなければ俺が止めていた。俺はお前のトレーナーだ。抱えてる選手が二度と歩けなくなるなんて御免だからな。何も恥じることはない。最高のラストファイトだ』
アラガキのトレーナー、退役軍人のミヤギもまた侠気溢るる人でした(試合後、贋作がアラガキの控え室を訪ねると黙って席を外すのもいい)。
ジョーに渡してくれと、ドッグレースの外れ券を贋作に返すアラガキ。

あの外れ券はアラガキが買ったものではなく、贋作が弾除けのお守りとして出征前にアラガキに渡したものだったんですね。
『ジョーに伝えてください。俺もお前を信じる、と』
きっとアラガキはジョーとの闘いで“まっ白”になることができたんだと思います。舞々は見れませんでしたが、金龍飛戦とは一味も二味も違う男泣きの一戦でした。

