映画化が発表された本編に先立って霞ヶ丘詩羽ルートのスピンオフコミックが大団円を迎えました。
「冴えない彼女の育てかた 恋するメトロノーム/第10巻」
(2018年6月25日初版発行/丸戸史明・武者サブ著)
私、本編アニメの方で頻出するある単語がちょっと気になっていました。
それは“クリエーター”。
それは恐らくモノ作りに関する描写が少ないために、発言がひとり歩きして「何だこの意識高い系な奴ら」という印象を持ってしまったせいだと思います。
対してこのスピンオフコミックの方は、大学生となった作家・霞ヶ丘詩羽(ペンネーム:霞詩子)とバイト編集者・安芸倫也が二人三脚で作品を仕上げていく過程が丁寧に描かれており、そののめりこみ過ぎにも程がある真摯さに好感が持てる仕上がりになっています。
最初は二人。やがてイラストレーター、アニメーター、様ざまな人間を巻き込んで、大人の事情に翻弄されながらそれでも理想を追い求める。本当に描きたいものは何か。
それは創造に加担する悦び。
『さあ、これでファンタスティック文庫のトップはいただいたわ。次はアニメのトップを取るわよ』
本編でメインヒロイン足り得なかった詩羽と詩羽のデビュー作「恋するメトロノーム」で恋に破れた悲恋のヒロイン沙由佳(さゆか)を重ね、その双方のリマッチとして本作と詩羽の新作「純情ヘクトパスカル」が生まれるという二重構造。
コミックサイドには新キャラとしてイラストレーター嵯峨野文雄(諸般の事情で男性名を名乗っていますが女性。本名・相楽真由)が登場。
倫也に反発し、詩羽と対立しながらやがてチームとして「純情ヘクトパスカル」を立ち上げて行くのですが、この娘が目茶キュート。
特に最終巻での存在感たるや完全に詩羽を凌駕。
『うるさい黙れ! あたしを爪弾きにするな! だってあたしは「純情ヘクトパスカル」を愛してる! 霞詩子を愛してる! それに それに あんたを 愛してる!』
「恋するメトロノーム」のヒロイン真唯に似ていると言われた真由が皮肉にも沙由佳の立場に。
次は是非、真由ルートのスピンオフを描いて欲しいと思います。