『私たちテレビ版では、いつも一番目立っていたから、劇場版のこのモブ的扱いにまだ慣れないわね、って言ったのよ』
『仕方ないわよ。だってもうサークル関係者じゃないし。多分キャストの順番もずっと下の方に落ちているに違いないし…』
冒頭いきなり炸裂した霞ヶ丘詩羽と澤村・スペンサー・英梨々のメタ発言。
本作は、原作、TV版、作中彼らが作っているゲームソフト、そして劇場版(更に言えば劇場版を作っている人々)が交わり重なる多層メタ構造を愉しむアニメでもあります。
「冴えない彼女の育てかた Fine(フィーネ)」
(2019年/亀井幹太総監督)
TV版2期「冴えない彼女の育てかた♭(フラット)」第11話「再起と新規のゲームスタート」から直球地続きではあるのですが、尺の都合で大事な部分の説明が景気よくすっ飛ばされています。波島伊織がいつの間にかblessing softwareに加入しているのもそうですが、一番大きいのは、
倫也が書いている各ヒロイン攻略ルートのシナリオは、全て倫也を取り巻く女性をモデルにしている、というところ。
つまりTV版1期2期の展開が、新作ゲームのシナリオに反映されている、という事です。
サブヒロインルート(先輩、後輩、幼馴染×2)を順調に書き上げて、最後に残ったメイン・ヒロインルートのシナリオが遅々として進まない、というのが本作立ち上がりの状況になります。
なので、倫也が書いたメインヒロイン(巡璃すなわち加藤恵)ルートで、シナリオライターとイラストレーターが去っていったが巡璃だけが残ってくれた、その嬉しさに号泣してしまう、というシーンは2期11話の倫也と恵がベースになっています。
倫也はここでヒロインに主人公を抱きしめさせていますが、恵がここにダメ出し。
『ここは抱きしめちゃ駄目だよ』
『そうなの?』
『そうなの』
『けどそれって巡璃のフラグ立ってないって事じゃないか』
『違うよ、全然違う。もうとっくにフラグは立ってる。だからここは主人公を思う存分泣かせてあげようよ』
実際、2期11話で恵は号泣する倫也を抱きしめようと手を出しかけますが、途中で止めて戒めるかのように後ろで組んでいます。
あの時点で既に恵は倫也の事を好きになっていたと間接的に告白しているわけですが、鈍感倫也は思い至らず(ったくこの朴念仁は…)。
にしても加藤のヒロイン力の高さよ。
倫也宅の玄関でコンパクト開いて前髪整え、合鍵で中に入り、勝手知ったるキッチンでテキパキとタマゴサンドその他を作り、食べ残しを片付ける際にしっかり倫也の齧ったサンドを食べる。
手を握られてテレるヒロインの心情を聞かれて『わからないよ』と答えつつ倫也の手に手を重ね『やってみないとわからないよ』。
『何か、レトロなイベントだね』
『オタク男子はこういうのがいいんだよ』
でも、もうちょっと特別感が欲しいな、とそのまま指を絡ませ「恋人つなぎ」に。
この時の指の描写がなんかすげーエロい。
更にこの体勢から霞ヶ丘とのキスの一件を持ち出してつねるという高度な併せ技まで披露。
実は霞ヶ丘や英梨々など比較にならないほど加藤は”めんどくさい女”なのですが、行動の端々に倫也に寄り添う等身大の優しさのようなものを滲ませてくるのでトータルで優勝って感じです。
細かいストーリーは割愛しますが、エンドクレジット後に驚きのCパートが待っています。必ず最後までご覧ください。
おまけ
結果的に「滑り台行き」となった霞ヶ丘と英梨々ですが、二人の後ろ姿を見て、こんな字幕をつけて見たい衝動に駆られました。
★プレイバック恵!
★そして霞ヶ丘先輩が滑り台に行かない世界線は
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★本日6月9日はジョニー・デップ(1963~)の誕生日(おめでとうございます!)
大ヒット作をゴロゴロ生み出すかと思えば、作家性の強い(一般受けにはちょっと遠い)作品とかにも出る作品選びの基準がよく分からない人です。
1本選ぶなら「ギルバート・クレイブ」、2本なら「シザーハンズ」ですが、今回はポランスキーの異色作と盟友ティム・バートンの変化球をひとつずつ。