デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【邦題に騙されるな】名もなき塀の中の王【虚勢と支配と親父と息子】

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『お前の父親でよかった…』

(Proud to be your dad.)


北アイルランド少年刑務所で歳を重ねて、一般刑務所に移送となったエリック・ラブ(ジャック・オコンネル)。囚人番号C9487WB。19歳。

年院での度重なる暴力沙汰が祟って、最重要監視対象として独房へ。

この刑務所には人生の大先輩、父親が収監されておりました(無期刑で)。

「名もなき塀の中の王」
(2013年/デヴィッド・マッケンジー監督)

 

よくここまで内容を反映しない邦題をつけられたものだと感心します。

これじゃまるで少年が機知と度胸で囚人のカリスマに昇りつめていく話みたいじゃないですか。

原題は「STARRED UP」。業界用語で、少年刑務所から成人刑務所に「昇格」することを意味するんだそうです。

大人には大人のルールがあります。キレやすい子供が大人の社会へ。学生が卒業して就職して社会に出るようなものです。塀に守られた場所から塀で隔離された場所へ。

独房に入るや否やエリックは安全カミソリ踏み潰して刃を取り出し、歯ブラシ燃やしてカミソリ埋め込み、柄の先を溶かして蛍光灯カバーを止めるネジ穴に押し当てて、即席のドライバーを作り、お手製の武器をカバーの中へ。

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何と言う手際の良さ。一瞬の迷いも無し。その行動力を他の事に役立てれば違う道が開けたでしょうに…。

ムショ内の序列など知った事かとばかりに気に入らない奴はタコ殴り。

ライターを分けてくれようとした親切な向かいの独房の黒人をそうとは知らずにドタマカチ割り(ゴルゴ13か、お前は!?)。

押さえつけられれば看守の股間に喰らいつくマングース殺法。

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この駄々っ子を何とか「社会」に適合させようと気を配る心理療法士オリバー(ルパート・フレンド)と集団治療の参加者たち。

何より、父ネビル(ベン・メンデルソーン)が息子を思って心砕いているのですが、まぁこの親父が息子に輪をかけてクソ(笑)。

虚勢と嫉妬と支配欲に満ち溢れた瞬間核融合炉(しかも長期ご滞在の特典でゲイ)。この親にしてこの子あり。

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気持ちも想いも聞こえず届かず交わらず。互いに癇癪、殴り合い。

濃いなぁ遺伝子。

悪目立ちしすぎたエリックは、囚人・看守双方から的にかけられ…。

ちょっとサスペンスフルな香りがしなくもないですが、基本、刑務所の中であがく人々のプリズン・グラフィティ。

主人公はヒーローではなく、心理療法士は理想を全うできず、手鼻くじかれ足すくわれ。

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ドラマらしいドラマがない上に主人公親子がクズなので、退屈と感じる人もいるでしょうが、エリックの最後の一言に製作者の良心を見ました。

良作だと思います。

 

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★本日11月20日全日本プロレス名誉レフェリー、和田京平氏の誕生日(おめでとうございます!)。

もう「プロレス者」稼業は足を洗ってしまったのでご尊顔を拝することもなくなっておりますが、2015年の「世Ⅳ虎(よしこ)vs安川惡斗」の試合映像で比較的最近の様子を確認することができました(話の本筋はジャッキー佐藤vs神取忍セメントマッチですが…)。 

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