デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【火事場泥棒の食物連鎖】ニューオーダー【壊して奪って殺して燃やす】

「金持ちは皆殺しだ!」

「全部ぶち壊してぇ!」

国も時代も問わない改革の初期衝動でございます。

ニューオーダー(2020年/ミシェル・フランコ監督)

冒頭のモンタージュが「メランコリア」っぽかったので(その後に続くのが結婚式という事もあって)ラース・フォン・トリアーを意識しているのかしら、なんて思いましたが、終わってみればトリアー駅は余裕で素通り。コスタ・ガヴラス駅をオーバーランして車止めに激突という感じでございました。

舞台はメキシコ。都市部に限定しても1.3%、全土で見れば僅か0.8%しかいない「富裕層」がこの世の春を謳歌している国。

全人口の過半(全世帯の56.6%、全人口の62.0%)を占めているのは低所得層。

今日は政財界に強力なコネを持つ富裕層、ノベロ一家の娘マリアンの結婚パーティ。しかし、門の外では、貧富の格差拡大に抗議するデモ隊が暴徒と化し、破壊衝動の赴くままに街をささらもさらにしておりました。

やがて貧乏人の群れはパーティ会場にも。それを合図に何と使用人まで総決起。


よくも今まで安い賃金でこき使ってくれやがったなー!

ごちゃごちゃ言う奴には迷わず発砲。権力者だった奥様は金庫開けたら即射殺。

メイドは鞄に詰め込めるだけのお宝詰め込み、雇い人の所持金残らず巻き上げ入れ喰いやり逃げ掴み取り。

警察は初手から役立たず。出動した軍隊は暴徒を片っ端から掃討しつつ、金持ち見つけて拉致誘拐。身代金要求して小遣い稼ぎ。金持ちを暴徒が殺し、軍が暴徒を鎮圧し、生き残った金持ちから毟り取る。火事場泥棒の食物連鎖

暴動翌日のニューメキシコシティ。


マリリンも彼らの手に落ちて西村寿行

最終的には軍上層部が関係者全員殺して燃やして「全部なかったことに」。ついでに金持ち誘拐脅迫の犯人でっちあげて手柄独り占め。


正義も運もご都合主義もつけ入る隙がありません。あらゆる善意が死によって報われる格差社会のリアリズム。

胸糞も 一周回ると 清々しい。

人によっては不愉快千万な展開かもしれませんが、私は妙に腹落ちしてしまいました。

 

★ご参考

 

 

 

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