“本日、サンチャゴとイースター島は朝から激しい雨が降っています”
窓の外は快晴。しかし、ラジオは執拗に繰り返す。“サンチャゴは雨”と。
「サンチャゴに雨が降る」(1975年/エルビオ・ソトー監督)
1973年9月11日に勃発したチリの軍事クーデターを発生から僅か2年後に映像化。冷めないどころか色々と“熱い”作品。
監督のエルビオ・ソトーは、アジェンデ(倒された大統領)直々のご指名で地元サンチャゴTVの製作本部長兼ディレクターになった人。バリバリの当事者です(クーデターが起きるや速攻でフランス亡命)。
1970年、自由選挙によって誕生した社会党政権。サルバトール・アジェンデ大統領は、富の分配(企業や鉱山の国営化)を推し進めますが、富裕層にとってそれは“奪われる”事。
金持ちと大企業(と多分アメリカ)の援助・協力を得た陸海空軍+治安警察軍の一斉蜂起。
負け戦を敗者視点で(しかも、いい感じに怨恨が煮詰まった2年後に)描いているわけですから、感傷過多な面もちらほら。
しかし、負け戦を負けた側から描く事自体は絶対的に正しい行為。
ひとつ困った事は、話が錯綜しているにもかかわらず時系列を分断した“回想形式”が鑑賞のハードルを上げていること。
よく観ていないとかなり混乱します。チリの事情に詳しければ、説明が無くても分かる時代的な記号で時間軸が分かるのでしょうが、知識がなければただの背景。
とは言え、チリ=ワイン程度の認識しかない人間にとっては実に有意義な歴史教科書です。
邦画で軍事クーデターと言えば「皇帝のいない八月」ですが、山本圭が過去にチリ・クーデターに遭遇した事を回想するシーンで、本作の映像が流用されています。