『もしかしたら自分はとっくの昔に死んじゃってて、今の自分は電脳と擬体で構成された模擬人格なんじゃないか。いや、そもそも初めからあたしなんてものは存在しないんじゃないか』
『わからない。私もキルドレなのかしら。今あなたに話した事もどこで聞いたのか何で読んだのか本当の事なのか、どことなく何もかも断片的な感じがするの。自分が経験した事だっていう確信がない。手応えが全然ないの』
『覚えているか。君は6歳の時、弟とお医者さんごっこをした。自分のを見せる番になったら逃げ出しただろう。君の思い出はタイレルの姪の記憶が移植されたものだ』
『ラムさん、人間ってどこから来てどこに行くんでしょうねえ・・』
という訳で、正しく押井守の映画ではありました。ありましたが。
「スカイ・クロラ」(2008年/押井守監督)
なんでしょう、この“しゃらくささ”は。今までの押井作品が「映画秘宝」だとしたら、今回は「Cut」とか「プレミアム」な感じ。上っ面お洒落。
で、スタッフよく見て納得。
脚本:伊藤ちひろ。脚本監修:行定勲・・・って完全に行定組やないか!
つまりこの映画は「攻殻」や「パトレイバー」の延長線ではなく、「セカチュー」や「クローズド・ノート」の延長線上にあるって事です。
同じ伊藤でも和典とちひろじゃ雲泥どころか住んでる宇宙が違います。
世界観で「オネアミス(と言うかガイナックス)」に遠く及ばず、飛行戦で「豚(と言うかジブリ)」に及ばず。
CGはどんなに良く出来ていても所詮計算機の産物。魂を感じません。「ヱヴァ・破」の仮設五号機シーン(全カットフルCG)は全く違和感が無かった(言われなければ気がつかなかった)のに。「クロラ」のこのよそよそしさは一体・・。
同じ失敗でも「立喰師列伝」のような“景気のいい破綻”なら微笑ましいのですが。
菊地凛子は何故抜擢されたのか謎(「人狼」の武藤寿美並みに微妙)。谷原章介、栗原千明は“いい感じ”でした。特に谷原くんは声優で喰っていけるのではないでしょうか。
にしてもなんで行定なんかと・・・。
ところで、草薙水素が持っていた拳銃、あれ何だったんでしょう。概観フォルムはワルサー・ニューPPKだと思うのですが、トリガーの形が違います。何故かここだけガバメント系・・に見えたのですが、サントラジャケット(写真中央)だとワルサーのトリガーですねえ。見間違えたかな。