『彼がジョン・ウーを有名にしたんだ。彼がいなければ、今でも香港で鳩を撮ってるだろう』
『フェイス/オフはいい映画だったよ』
『あんたを使ったか? 新作はどうした』
『セガールに盗られた。ポニー・テールを切るそうだ』
嗚呼・・。
「その男、ヴァン・ダム」
(2008年/マクブル・エル・メクリ監督)
ジャン=クロード・ヴァン・ダムが、落ち目のアクション・スター、ジャン=クロード・ヴァン・ダムを演じるセルフ・パロディ作。
セミ・ドキュメンタリーだとばかり思っていたのですが、きちんとフィクションとしてのストーリーがありました。
仕事がなくなって、娘の親権争いにも敗れ、頼みの新作をスティーブン・セガールに奪われ人生ズンドコのアクション・スター、ジャン。
生まれ故郷ベルギーに帰ったら郵便局強盗に巻き込まれ「下痢腹に浣腸」。
しかも、外では“金に困ったジャンが遂に強盗”という話に。郵便局の周りは故郷の英雄ジャンを応援する野次馬で溢れ・・・タチの悪い「狼たちの午後」状態。
凄いのは、フィクションの中に突如ノンフィクションが乱入するメタ構造。
郵便局内のセットが見切れる位置で、ジャンが自分の半生、カラテとの出会い、ハリウッドの栄光と挫折を独白する長回しのワンカット。
『これは映画だ。俺の映画だ』で始まるこの自分語りには目頭が熱くなります。
どこまでが真実でどこからが虚構なのか。その分水嶺を愉しむ映画なのかもしれません。