デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

愛すべき愚作、完結編。 20世紀少年<最終章>ぼくらの旗

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“ツッコミ所満載”はトンデモ映画への賛辞(惨事?)ですが、この映画の場合、本当に突っ込むとリアルタイムでは間に合わず、リモコン片手にシーン毎に一時停止して「ちょっと待てい!」とボヤかなければなりません。

破綻に未熟を上塗りした愛すべき愚駄楽々3部作、堂々の完結です。

20世紀少年<最終章>ぼくらの旗」

(2009年/堤幸彦監督)


前半、ともだちの正体に関するあからさまなミス・ディレクションがあるのですが、「おいおい、いくら何でもそりゃねぇだろ」「いや、こいつらならこれくらいの原作破壊はするやもしれん」という葛藤渦巻いて、緊張感アゲアゲ(笑)。

リアリティの「リ」の字もないのは原作も同様ですが、要所要所に入る杉浦氏入魂の表情画(タイマフィアと中国マフィアが、カンナにワクチン打たせる為に一芝居打った後全員玉砕した事実を知った時のカンナの表情とか)は魅力でした。

ところが、映画は話の展開最優先(しかも猛スピード)で、細かいエピソードを根こそぎ割愛。人も台詞も簡略化。結果、登場人物に深みというものが全く無く、演技不要の記号芝居がフルスロットル!

他にも、その日は細菌撒くぞ、と予告してんのに何で皆普通に街中歩いてんだよ、とか、潜伏期間12時間のウィルスなのに何で浴びた瞬間血ぃ噴いてんだよ、とか色々ありますが、虚しいので「気づかなかった」事にします。

数少ない映画化の功績は、文字(グーダララー、スーダララー)だけだとどうイメージを膨らませても名曲とは思えない「ボブ・レノン」をちゃんとした歌にした事でしょうか。

コンサート会場でのロック・アレンジはなかなかにかっちょ良かったです。

バーチャル・リアリティーの中での贖罪に過去を清算する力が無いのは自明ですが、ともだちの記憶で作られている世界での“やり直し”には意味があると思いたいですね。

何だかんだ言って十分愉しんだので、映画としては(大)失敗ですが、企画としては成功だったのかもしれません。