デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

スノッブ向け撒き餌はいいから…。 インセプション

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クリストファー・ノーラン監督のデビュー作メメントのDVDには、ちょっと変わった映像特典が付いています。

それはリバース・バージョン

10分しか記憶を保てない主人公の意識を小刻みに遡っていく本編を時系列に並べなおした直球編集版です。

で、これを観ると・・びっくりするくらいつまらないんですよ(笑)。

如何に「メメント」がトリック一発勝負で成り立っているかが良く分かります。

最新作も感想は一緒。「スゲー!」のは間違いありませんが、それ以上でも以下でもありませんでした。

インセプション

(2010年/クリストファー・ノーラン監督)


“多重構造になっている誰かの夢”という着想は手垢まみれではありますが、映像の観せ方が(部分的に)巧いので、印象は「スゲー!」になります。

ただ演出がとにかく凡庸で・・。

色々小ネタ(スノッブ向け撒き餌)は散らしているようですが、枝葉末節。

夢の世界を如何に夢の世界として描くか、が大事なのに、パリ折り返しとホテル無重力以外はただのアクション演出で拍子抜け(007リスペクトは必要だったのか)。

筒井康隆「ダバダバ杉」を原点(?)に、ブレードランナー一連の押井守作品を観た後では小手先という印象しか残りません。

亡き妻に対する贖罪はリメイク版「ソラリスでやってますし、最後に夢か現実かってトリックもバニラ・スカイ(これもリメイクだな)で試行済み。

小ネタで面白かったのはミノス王の娘アリアドネくらいでしょうか。

海神ポセイドンの怒りを買ってミノス王の妻は牛に一目惚れ(遠野物語だな)。異種交配の結果、生まれたのは半人半牛の怪物ミノタウロス

この怪物を幽閉するために建造されたのが巨大迷宮ラビリンス

ここに生贄として送り込まれる奴隷の1人に恋したアリアドネは、恋人が無事迷宮から生還できるように糸玉を渡します。これを辿れば迷わず戻って来れる…恋人を繋ぐい糸の伝説の元ネタです。

この糸玉の智恵を授けた賢人ダイダロスは息子共々、迷宮に幽閉されますが、鳥の羽を蝋で固めた翼を作って脱出。しかし息子は太陽に近づきすぎて墜落死します。息子の名前はイカロス

ディカプリオの役名コブ(Cobb)にはカモメの意味があるようで。迷宮から飛翔するダイダロスのイメージを重ねているのかもしれません。

アリアドネ役のエレン・ペイジは、若い時のジェシカ・ハーパージェニファー・コネリーを足してちょっと不細工にした感じで超好み(写真中。アルジェントに気をつけろよ)。

さて、議論になっているラストシーン。

二人の子供がコブの夢の中と全く同じなので、これは、と思いましたが、娘のフィリッパ演じている子役は二人いるんですね。

クレジットだと、Phillipa(3years)とPhillipa (5years)。別人だったのか。って事は…。