ベトナムものなのに悲壮感無し、軍事考証ゼロ、銃器のこだわり無し。
流行のお膳立てに乗っかって空疎なアクションを刻んでいるだけなのですが、このカラッポ感と主役チャック・ノリスが見事にシンクロして、偏差値貧乏な佳作となりました。
「地獄のヒーロー」
(1984年/ジョセフ・ジトー監督)
原題は「Missing In Action(-戦闘中行方不明-)」。要するに捕虜奪還ものです。「地獄の7人」の翌年、「ランボー2」の前年という微妙な立ち居地。
ジェームス・ブラドック大佐(チャック・ノリス)は、捕虜収容所を脱出してアメリカに帰国しましたが、悪夢に苛まれる日々。
まあ、一応苦悩とかしてますが、チャック・ノリスの頭にそんな機能あるわけないです。
「タクシー・ドライバー」の狂気も、「ローリング・サンダー」の索漠とした倦怠もなく、政府の米国人捕虜解放運動の尻馬に乗ってベトナムお礼参り敢行ツアーにゴーアヘッド!
ベトナムに着いた当日に、将軍の寝込み襲って捕虜抑留キャンプの場所聞き出して殺害(いきなりボスキャラ殺っちゃったよ!)。
一旦ベトナムを離れたチャックはタイに入り、旧友タッカーの助力で船、上陸用ボート、銃火器等を景気良く自腹で入手。
その後を捕虜時代の因縁浅からぬ(仲間殺されたり、体刻まれたり)軍幹部率いるベトナム暗殺隊が。
部屋に隠れてナイフで急襲・・が失敗するや向かいの建物からグレネード・ランチャー! 君ら加減って事を知らんのかね。
絶対、こいつとの対決がクライマックスだろう、と思われた軍幹部をあっさり斧でかち割って、いざ出発(さすが、「13日の金曜日・完結編」の監督だ)。
目的地に着くや、チャックは機関銃とサブマシンガンと手榴弾とプラスチック爆弾で抑留キャンプを瞬間殲滅。
なぁ、どうして君ら戦争負けたん?
この後に続くアクションの淡白な事。「カプリコン1」チックなエンディングもまるで盛り上がらず。
ま、それもこれも含めて「嗚呼、チャック・ノリスだなぁ」と。
スタローン、「エクスペンダブルズ2」に呼んでやってくれよ、チャック・ノリス。
追記:ありがとうスタローン!
余談ですが、チャックが旧友に再会するタイのバーで、フロア歌手のお姉さんが「I’m Sexy」を熱唱しているのですが、あまりに下手すぎて何の曲かわからず、サビまできてようやく「あ、ロッド・スチュアートか!」。風呂で屁をこいたようなヘッポコピーなシンセサイザーが激安感を上塗りしています。