デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

指先まで演技する戦う哲学。 イップ・マン 葉問

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例えば、オープンハンドで構えていた手を一瞬ナックルにする・・ただそれだけで伝わる感情があります。

武術監督サモ・ハン・キンポーの、そして演技者・ドニー・イエンの現時点に於ける最高傑作ではないでしょうか。

「イップ・マン 葉問」(2010年/ウィルソン・イップ監督)


昨日ご紹介した「イップ・マン/序章」の地続きの続編(前編・後編みたいなものなので、必ずセットで観るように)。

佛山から香港に逃れ、詠春拳の道場を開いたイップ・マン(ドニー)。

しかし、弟子のひとりが香港を仕切る洪拳と悶着を。洪拳の師匠・ホン(サモ・ハン)は、武館を開設したければ掟に従えとイップに告げます。

それは「線香が燃え尽きるまで、他派の挑戦を受け続け、倒されないこと」。

不安定な円形テーブルの上で他派師匠の挑戦を受けるイップ。ひとり、ふたりを倒し、3人目はホン。

ドニーとサモ・ハンは「SPL/狼よ静かに死ね」でも凄絶な一騎打ちを演じていますが、“マフィアのボス対はみ出し刑事”という構図と、“洪拳対詠春拳”という図式では趣が全く異なります。

ワイヤーは使っていますが、その動きの凄まじさと美しさはクンフー対決史に残ります。

掟はパスしたものの、上納金に対する認識の違いから入会を拒否するイップ。

上納金はホンの私腹を肥やすためではなく、統治者である英国人と渡りをつける事により、香港武芸界の自治を守るためのものでした。

英国人主催の「ボクシング大会」の仕切りを任されたホンは、イップと弟子たちを試合に招待し、演舞の機会を与えますが、ここで英国人ボクサー・ツイスターが中国武術を侮辱。

謝罪を要求するホンにツイスターは「俺に勝ったら謝ってやる」と更なる挑発を。

さて、ここからは異種格闘版「ロッキー4」。

前半のイップとホンの確執と和解を「ロッキー」「ロッキー2」と見るならば、正に1本で3度美味しい見せ場の波状攻撃。

素晴らしいのは、武術に対する理念(哲学)をイップが戦いを通して体現していること。

暴力対暴力ではない畏敬の念。命のやりとりをするからこそ生まれる思いやり。

決して「ロッキー」の焼き直しでもパロディでもないと思います。

最後に入門希望生として幼年期の“あの人”が登場しますが、まあ、よく似たガキを見つけてきたものです。

是非、彼の入門後を描いた続編を作ってください(※写真下は葉問本人とあの人)。

★ご参考【まずはこちらから】 

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