
人を惹きつける不思議な魅力を持った宣教師と、人を手なづける術を熟知した暴力刑事。
二人は山間に小さな村を作り、宣教師は先生と呼ばれ、元刑事は村長に。
そして30年。音信不通だった先生の息子の元に届いた父の訃報。
息子ユ・ヘグク(パク・ヘイル)が訪れた村には新鮮な、しかし禍々しい空気が充満しておりました。
ちょっと前なら日本映画の独壇場だった“田舎・因縁・サスペンス”ですが、完全に持っていかれてしまいました。
「黒く濁る村」(2010年/カン・ウソク監督)
どこかよそよそしい村民、父の死因も明らかにせず埋葬しようとする村長、村人の“共有財産”になっている雑貨屋の女ヨンジ(ユソン)。
彼らがひた隠す秘密とは? 父の死因は? そして全ての始まりである30年前のサムドク祈祷院集団自決事件の真相は?
冒頭で煽った先生のカリスマ性がドラマに生かされていないとか、いち刑事が司法上層部まで顔が利くまでに成り上がる過程が弱いなど、突っ込み所は満載なのですが、飽きさせない展開で161分を引っ張ります。
「ツインピークス」のような連ドラにしてもいけたかもしれません。
にしても悔しいなあ。
ガイアナ人民寺院あたりにインスパイアされたのだと思いますが、日本には横溝文学と言う下地と、上九一色村とかヤマギシといった“自給自足田舎暮らしカルト”という実例があります。
誰か書けよ。ああ、でも、まともに演出できる監督がいないか…。
主人公に恨みをもつ検事パク・ミヌク(ユ・ジュンサン)が次第に頼もしい助っ人になっていくのが“いい感じ”。
原題は「苔(MOSS)」。検事が主人公に言った「苔のように岩に張り付いて静かに生きろ」という台詞から取っているようですが、ミステリのタイトルとしてはちょっと…。
黒く濁る村・・ナイスな邦題だと思います。