デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

そこは人間交差点。 大都会 闘いの日々

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人は流れに逆らい、そして力尽きて流される

装甲騎兵ボトムズ」第21話「遡行」の予告ナレーションですが、正にそんなキャッチがぴったりの虚飾を排したハードボイルド人間ドラマ。

 

「大都会 闘いの日々」 

(1976年1月6日-8月3日/日本テレビ

 

タイトルこそ繋がっていますが、後の「大都会PARTⅡ、PARTⅢ」とは宇宙が違います。

オープニングの曲からしてもう…。「西部警察」のファンファーレのようなアッパーな曲調を嗤って地獄に引き摺り込むヘヴィでグルービーなギターのうねり。


伊部晴美と0座標によるかっちょいいにも程があるメイン・テーマです。


舞台は捜査4課(マルボー)。一応主役は渡哲也演じる警視庁捜査4課刑事・黒岩頼介ですが、彼も、彼を支える東洋新聞城西署記者クラブ・キャップの滝川竜太(石原裕次郎)もドラマの中では無力な傍観者に過ぎません。


ヒーロー不在の刑事ドラマ。アクションは最小限(と言うかほとんどない)。黒岩は常に喉まで出掛かった言葉を飲み込んで、ただ「はい」と頷き、後姿で煙草を吹かす。


大仰なドラマがあるわけでもありません。例えば、第11話。


「大安」倉本聰脚本/降旗康男監督)

 

関東一の規模を誇る大日会組長(内田朝雄)の一人娘が結婚。組長は戦後日本を身体を張ってのし上がり、男手ひとつで娘を育て上げました。

勿論、娘は堅気。夫となる男も堅気。花嫁の父である組長以外、式に筋者は一切招待しない気配りを見せましたが、ここに対立する関西ヤクザが殴りこむという噂が立ち・・。

普通、この設定なら、殴り込みの実行と阻止というサスペンスになるのでしょうが、倉本脚本はそんな抗争には何の関心も示しません。

ただひたすら花嫁の父の心情を追いかけます。同じ日、同じ会場で結婚式を挙げる予定の一般人が6組。1軒1軒を訪ね、安全を約し、頭を下げる組長。それを見つめる黒岩。

どう見ても悪者は俗悪な正義を振りかざす新聞記者(マスコミ)連中です。やくざは悪い、だから、関係する者も全て悪人だ…。

花嫁に「同じ日に挙式する一般人がどうなってもいいのか?!」と迫った新聞記者(平泉征)は、組長に心酔する運転手(清水健太郎)に成敗されます(死にはしない)。

このシーンがなくても十分話は成立するのですが、刺したかったのでしょう、倉本さんが。

あがいても、あがいても…。もうひとつの人間交差点ですね。