三面怪人ダダ。
シリーズを通して最も強烈なインパクトを残したキャラではないでしょうか。
今でこそ、バルタン星人と並んでキャッチーな魅力を振りまくお茶の間の人気者ですが、初登場時の衝撃と言ったらもう…。
子供心に、絶対夢に出て来て欲しくない怪獣(宇宙人ですが)ナンバー1のトラウマ怪人でした。
「ウルトラマン/第28話・人間標本5.6[英題:HUMAN SPECIMENS 5 & 6]」(1967年1月22日放送/野長瀬三摩地監督・山田正弘脚本)
北米版DVD-BOX[THE COMPLETE SERIES]からの個別エピ・レビュー、今回はお話よりも怪人のキャラそのものを追ってみましょう。
“三面怪人”というのは、ダダが3つの顔を使い分け、本当は一体なのにあたかも三体いるかのように見せかけている所からきていますが、デザインの当初構想は、“見る角度によって違う顔に見える”だったそうです。
つまり、ピカソの「ひとつのものを角度によって分解し、同一視点で再構成する」、一種のキュビズムを実践しようとしたようなんです。
これがまあ、デザイン的に“無理”って事になり、あの形に落ち着いたんだとか。
そら無理っしょ(笑)。試しに三体の顔をひとつに収めてみましたが(写真2枚目)、これじゃ阿修羅王ですね。
もうひとつ、あの身体の文様。見つめているとクラっと来そうなあの線画はオプチカル・アート(オプ・アート)そのもの。
美術に詳しい訳ではないのですが、定義すれば「特殊な視覚効果を狙った計算された抽象的絵画」という事のようです(一例を挙げておきました。※写真下)。
そして名前の由来であるダダイズム。
既製の秩序や常識を否定し、解体し、再構築する芸術運動。
近代アートの集大成と言えるのではないでしょうか。
お話の方もチラッと触れておきましょうか。粗筋を簡単に言うと、
“ダダ271号は、辺境の惑星・地球に人間標本採取にやって来たが、ノルマがこなせず上司に叱咤された上に人間とウルトラマンにボコられて哀れなサラリーマン人生を閉じる”
という感じです。「駄目だ。ウルトラマンは強い」とか泣きを入れているのに、知った事かとばかりにノルマ達成を(無線で)命じるダダ上司との会話に宇宙の枠を超えた労働者の悲哀を見ます。