『今だ、超能力を使え!』
『はあ? 俺が?』
『ただ見ているだけのためにここに来たのか?! 歩け! 進め! 声を張り上げろ! 貴様だって歩みは遅くとも超能力を目指す人間だろうが?! 自分の意思で動いて、他人も動かす。最も初歩の人間に許された超能力だろう!』
人は誰でも変わりたい、半歩でいいから前に進みたいと考える。
でも、そのためにはちょっとだけ誰かの後押しが必要だ。そして自分も誰かの背中を…。
『誰かが困った時は“前川さん”なのだ!』
“他人の青春ポイントの獲得に手を貸すのもたまにはいいだろ? 俺は青春男なのである。アホなほど愚直に”
そう、皆、アホなほど愚直に…。
「電波女と青春男」(2011年4月-6月放送/新房昭之総監督)
丹羽真(にわまこと)は高校2年の春、両親の海外赴任に伴って叔母の家に厄介になるというラブコメ定番の設定で田舎から都会に。
叔母は独身のキャリアウーマン。限りなく独り暮らしに近い環境を手に入れた真の幸運は叔母宅の玄関を開けた瞬間に瓦解。
そこには布団で簀巻きになってもふもふ言っている謎の少女が…。
少女は叔母・藤和女々(登場時39歳)の独り娘・藤和エリオ16歳。自称:宇宙人。
昨年、半年間行方不明(この間の記憶無し)。その後、学校で色々あって自主退学。現在、絶賛引き篭もり&奇行中。
真は女々、エリオ、クラスメイトの御船流子(みふねりゅうこ。周りの呼称はリュウシ)、前川さん(下の名前不明)に囲まれて青春ポイントを足したり引いたり…。
▲没個性に悩むヘルメット少女、リュウシさん。
▼179.9cmの長身を誇るが虚弱体質のコスプレ少女、前川さん。
依存型エリオ、積極型リュウシさん、見守り型前川さん。3人と等距離を保とうとする(どっち着かずな)真の立ち位置を女性声優陣はやや批判的に見ているようですが、選べねえよ!
エリオは面倒見たくなるし、リュウシさん健気だし、前川さんはミステリアスでどこか頼り甲斐があるし…(でも誰かひとりと言われたら、前川さん一択)。
唯一、邪険にされているのが、熱烈求愛型の女々さん。私なら即時全面降伏ですが、16歳から見上げる39歳というのは微妙な存在のようです。
そして、終盤で話をさらってしまう自称:超能力者兼宇宙人、星宮社(ほしみややしろ)。
夏祭りの夜、社が真に見せた本気の1億2446万分の1の“超能力”とは。
『信じて何が変わるか、五感全てに叩き込んでおけ! ハロー! そして、グッドバイ!』
ちょっと星空を眺めてみたくなる、不思議なお話でした。
ついでなので、BD/DVDのジャケについて。世に「ジャケ買い」なる言葉がありますが、本作は正にジャケ買いの逸品。
海と空の基調色“青”で統一されたデザインは美しいの一言。ジャケにキャラ、透明なアウターに背景という描き分けも秀逸。特に3巻、カツオコスプレの前川さんを引き抜くとスク水前川さんになるという仕様は拍手喝采。