『こいつはただの攻撃犬(Attack Dog)じゃない…ホワイトドッグだ!』
White Dog、それは黒人だけを襲うよう教育された特殊攻撃犬。
「ホワイト・ドッグ 魔犬」
(1982年/サミュエル・フラー監督)
夜道でうっかり白いシェパードを撥ねてしまった駆け出しの女優ジュリー(クリスティ・マクニコル)。
動物病院に運び込み手当。飼い主が見つかるまで預かることに。
しかし、この犬、ただの飼い犬ではありませんでした。
強盗(と言うかレイプ犯)をささらもさらにし、清掃車の運転手を南無阿弥陀仏、ジュリーの共演者の背中を般若波羅蜜多。
これは攻撃犬として調教された犬なのでは、と考えたジュリーは映画用の動物を揃えている調教スタジオへ。しかし、結果は最悪。
攻撃犬どころか黒人専門ホワイトドッグ。再調教不能な片道切符。
万策尽き果てたかと思いきや、スタジオの黒人調教師キーズ(ポール・ウィンフィールド)が「やってやろうじゃないの!」
『ホワイトドッグの再調教は未だかつて一度も成功したことはない。今度こそ…!』
意欲満々な調教師vs殺る気満々のホワイトドッグ。最後に笑うのは…。
途中、スタジオを脱走したホワイトドッグが黒人のおっさんを急襲。おっさんは教会に逃げ込みますが、神様なんか知ったことか!とばかりに引き裂く無慈悲。
祭壇前に転がされた死体はさながら生贄の子羊。
このカット(に限らないですが)はある種の人の逆鱗に触れたようで、お蔵入りの憂き目に(日本公開は8年後の90年。アメリカに至っては未公開のまま2008年ビデオスルー)。
ホワイトドッグを育てた老人が「子犬の頃から私が仕込んだ。あの子は完璧だよ」と得意げに語る恐ろしさ。
作った白人、正す黒人。
砂を噛むようなラストは70年代の残照でしょうか。
82年という時代を最も良く表現しているのが、ジュリー役クリスティ・マクニコルの髪型。
前年大ヒットした「フィジカル」のオリビア・ニュートン・ジョンそっくりです(よし、明るい話題で〆たぞ…)。