『この人殺しが!』
死者数が最大になるよう仕組んだ張本人が何をおっしゃいますやら。
“博徒”と付いていますが、着流しヤクザものではありません。
地方進出を目指す中央大手と地元中小の覇権争いを描いた堂々たる現代ヤクザものです(本作は純彌ではなく純弥名義)。
元新宿淡野組幹部・相羽雄作(鶴田浩二)が7年のお勤めを終えて出てきたら、組無しシマ無し子分無し。
今、関東を仕切っているのは大日本菊名会。
相羽にくっついてきたのは、盃も受けていない淡野組の三下(だった)山野三郎(小林稔侍)ただひとり。
その三郎も、相羽を不穏分子として排除しようとした菊名会との争いであっさりと命を落とし…。
警察から遺骨を引き取った相羽は、三郎の故郷、福島県の飯坂温泉に。
しかし、そこは菊名会が東北進出の足掛かりとして目をつけていた“戦場”でした。
1971年当時の飯坂温泉の様子が拝める歴史資料館でもあります。
揉め事を起こすために投入された菊名会岩井組の鉄砲玉・死神の竜次(渡瀬恒彦)。
狂犬演らせたらこの人の右に出る者はいませんね。
職務全うして地元の浅川組に滅多刺しにされた竜二の葬儀のため、乗り込んできた菊名会本隊。
浅川組に下駄を預けていた相羽は菊名会の指し手を正確に読んで、浅川組に入れ知恵。
更に昵懇を装いながら浅川組のシマを狙う北洋会と菊名会を咬み合わせるよう仕組んで漁夫の利を狙いますが…。
今回の鶴田浩二は正に死神。借り受けた浅川会の若者(いい感じのチンピラ地井武男)を捨て駒にして災厄の種を撒く。火の無いところに放火犯。
菊名会は北洋会との兄弟盃のため移動中の浅川組組長をインターセプト。和解を口実に菊名会の盃を強引に。
襖を開いたら儀式の間がどーん!(こういう演出、大好きです)
その帰りの電車の中で組長ハチの巣。全ては菊名会若衆頭・陣野行夫(渡辺文雄)の絵図。
さあ、浅川組組長の葬儀を誰が仕切る? 仕切ったものが飯坂の主となる。
浅川組か、親となった菊名会か、兄弟になるはずだった北洋会か。
相羽は浅川に仕切らせようとしますが、ここに死神のうわ前を撥ねる悪魔がいました。
警視庁榊警視正(丹波哲郎)。
最終目標は大日本菊名会の壊滅。消えてなくなればいいので逮捕・立件にはこだわりません。一足飛びに全員死体でも結果オーライ。
田舎やくざの命なんぞひと山幾ら。トラブルが起きやすい方へ起きやすい方へ誘導しながら、3組咬み合わせの自滅を狙います。
そして迎えた葬儀当日。
1973年、菅原文太が祭壇に向かって鉛玉飛ばしますが、その2年前に神社でワイルド・バンチをかました映画がありました。
死者203名、逮捕者350名。そして最後に笑ったのは?
この年、深作欣二監督は同じ「博徒」シリーズの1本「博徒外人部隊」を。
佐藤監督は2年後(つまり「仁義なき戦い」と同年)、大傑作「実録 私設銀座警察」を撮りあげます。
因みに佐藤が大傑作「新幹線大爆破」を、深作が大傑作「県警対組織暴力」を撮りあげた1975年、2人が手を取って作り上げたのが「Gメン75」です。
★ご参考
-------------------------------------------------------------------
★本日5月1日は「扇の日」
扇、即ち扇子です。京都扇子団扇商工協同組合が1990年(平成2年)に制定。
武器としての鉄扇も捨てがたいですが、センスはなかなかに優れた小道具でもあります。例えばこんな使い方…。