【グイグイ行く】それでも歩は寄せてくる ♯1【でも告らない】 - デストピア経典～曼荼羅畑でつかまえて（三代目）

『お前、私のこと好きだよな!?』

『何を言っているんですか？』

『だって！私しかいない将棋部入ってるし！』

『将棋したかったんで』

『将棋何も知らなかっただろ!?』

『でもしたかったんですよ』

『…それに私のこと“かわいい”って言うし…』

『かわいいんで』

くっそー、どうやっても認めないつもりだな…こうなったら…

『私のこと好きって認めたら抱きしめてやるぞ』

沈黙。これじゃ足りないか？…なら…

『チュ…チューもしてやってもいいぞ』

『…センパイ…集中したいので静かにしてもらえますか？』

危なかった…もう少しで認めてしまうところだった。すみませんセンパイ、告白するのはセンパイに将棋で勝った時と心に誓ったんです。

八乙女うるし。高校2年生。将棋部部長。

田中歩。高校1年生。将棋部部員。盤を囲んだふたりだけの放課後。

盤の上ではひたすら守りの歩。しかし盤の外では攻め一択。百人組手か千本ノックかの勢いで休むことなくグイグイ行く。

でも告らない。

「それでも歩は寄せてくる／第1話・センパイは可愛いので」（2022年7月7日深夜TBS放送／湊未來演出）

今日も歩は引く事知らないホメ殺し。

彼女が出来ても将棋部にいてくれるか？と問われれば、

『彼女が出来たら、むしろもっと部に入り浸りますね。俺は一生センパイと将棋を指していたいですから』

告るどころかほとんどプロポーズですが、そこは頑として認めず。

体育が苦手だからと授業前に黄昏ているセンパイを見つけた（正確には浮かない足取りだったので後をつけて来た）歩。元気づけてくれよ、という先輩のリクエストに応えて

『センパイは運動できなくても問題ないくらいかわいいですし、笑顔は最高にかわいいですし、なのに真面目な顔するとすごく綺麗ですし、髪の毛ツヤツヤですし、むきたてゆで卵みたいなほっぺですし、爪なんか桜貝のように愛らしいです（以下略）』

立ち止まったら死ぬのか!?な勢いのノンストップ賛辞。これはもう元気づけるを素通りして…。

というある意味「結婚しちゃえよ」的相思相愛な二人の微妙な距離感を愛でるラブコメです。

センパイに将棋で（しかも平手で）勝つまで告らないという歩の誓いが足枷と言うか一種の安全弁になって、二人の関係がなかなか進展しないというのがミソ。

とは言え、スタートラインが「ゴールまであと一歩」な所なので、安心感は抜群。

立場逆転高木さんと言ってしまえばそれまでですが、これはこれで。

好きと認めさせたいセンパイと、うっかり告ってしまいそうな歩。センパイの動揺と歩の寸止めポーカーフェイスを愉しみましょう。

おまけ

登場の基本ポーズが「顎乗せ」なセンパイのクライメイト、マキちゃん。