
昨年の大晦日、年内最後のレビューで取り上げた「近畿地方のある場所について」(背筋著)。
併せて「映画化」のお知らせもいたしましたが、その「本予告」が公開されました。
「近畿地方のある場所について(の予告編)」(2025年8月8日公開予定/白石晃士監督)
予告の絵面は原作(並びにコミカライズ)の特徴をいい感じに掴んでいて期待値を上げてくれるのですが、同時にそこはかとない不安も…。

当然ではありますが映画には主役がいます。
菅野美穂と赤楚衛二。
行方不明になったオカルト雑誌編集者の同僚と女性記者。この二人が失踪した編集者が関わっていた企画と資料の断片から、それらが指し示す近畿地方のある場所に導かれていく…のですが、この構成が激しく不安。

主人公がいるということはそれだけで怪異に理屈を与え、謎解きミステリーの側面を生んでしまいます。
本作(原作)は一見何の脈絡もない(しかし、そのひとつひとつがやたら怖い)エピソードをジグソーパズルのように並べちりばめ、ある1点を境に異なる風景に変化する活字によるアナモルフォーシスのような小説です。

怪異を横串で紡いでしまう(理に堕としてしまう)主人公の設定は、ホラーとしての面白さを確実に損なうものです。
道を大きく外れないように軌道修正する「狂言回し」は必要ですが、『出発するよ!近畿に!』みたいなやる気満々女性記者とかそれだけでちょっと萎えてしまいます。

かつて、これに近しい期待落差を味わった作品がありました。「WORLD WAR Z」。
原作は、死者が甦り生者を喰らい、世界人口が激減したゾンビ戦争が一応の収束を見てから10年という時間軸で、生き残った人々の証言から当時の実態を浮き彫りにする戦後始末記。
国も民族も超え、インタビューだけで構成された巨大な屏風絵(もしくは「絵巻物」)だったのですが、これをプラピ主役で映画にしたら何故か「ゾンビすげーけどおとーちゃん頑張る」な底抜けアクションに。
あの悲劇は繰り返さないでほしいものです。
★「近畿地方の~」本予告はこちら。
★原作本のご紹介はこちら。
★WORLD WAR Z(原作)のご紹介はこちら。
★娘二人と可愛くない上に役に立たない嫁を両手に抱えてお父ちゃん(ブラピ)が孤軍奮闘するワールド・ウォー Zのご紹介はこちら。
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★本日のTV放送【13:40~テレビ東京】