立て続けに大作・話題作に出演していながら、何故か「オーラが無い」、どこか「貧乏臭い」、妙に「しみったれて」いる大女優、ナオミ・ワッツ。
しかし、ここに一本、彼女のやさぐれた負のオーラを全てプラスに転化した奇跡の作品が。
(2001年/デヴィッド・リンチ監督)
ハリウッドとサンタモニカを結ぶ実在の道路「マルホランド・ドライブ」。
そこで死ぬはずだった女が記憶と引き換えに九死に一生を得てたどり着いた場所は「サンセット大通り」。
そう、往年の老女優が狂気に囚われて破滅していく様を死者が語るビリー・ワイルダーの名作の舞台です。
この通りのとある家に潜り込んだ女は、そこで女優の卵ベティ(ナオミ・ワッツ)と出会います。
とっさにリタと名乗ったこの(記憶喪失で頭から血流してる)不審な女を見ても何故かベティは警察を呼ばず、ご親切にもリタの記憶探しの協力を。
ここから先は謎の登場人物が入り乱れて夢と現実と時間軸が交錯する麻薬のようなリンチ・ワールド。
それにしても悲しい話だなあ。こんな悲しいラブ・ストーリー観たことないぞ。
見方によっては大願成就ととれないこともないから「悲劇のハッピーエンド」と言えなくもないですが。
とかく「難解」「形而上学的」「わけ分かんね」と言われるリンチ作品ですが、物語の基本骨子に気づけば、整合性を拒んでいるとしか思えないトリッキーな編集にもあらかた合点がいく作りにはなっています。
リンチ作品の中では分かりやすい部類に入ると思いますので、できるだけ予備知識無しで(とか言いながらこんな文章書いちゃ駄目ですよね)「ロスト・ハイウェイ」とセットで御鑑賞ください。
※参考:「出発点にして到達点。 イレイザー・ヘッド」
→2009年8月28日
「ゼロ年代偏差値貧乏ベストテン」→2009年12月29日
「とろける。脳が。 ロスト・ハイウェイ」
→2010年1月19日