デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

風呂敷を、広げ放題、畳まない。 ザ・ソルジャー

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「エクスタミネーター」の成功で資金集めが楽になったグリッケンハウス(なんてグッとくる響きなんだ)が、風呂敷を広げたいだけ広げて端っこすら畳まなかった大怪作。

「ザ・ソルジャー」
(1982年/ジェームズ・グリッケンハウス監督)


サウジアラビアのシャワール油田基地に核爆弾が! 爆発すれば石油の世界需要の半分が向こう300年に渡って使用不能に!

犯人グループの要求はイスラエル軍パレスチナ即時撤退。タイムリミットは96時間。

米大統領はCIA直属の特殊工作部隊、通称“ザ・ソルジャー”を非常召集。背後にKGBの暗躍を察知したリーダー(ケン・ウォール)は単身東ドイツへ。

どうですか、お客さん。このスケール、この無駄な大風呂敷。

冒頭の要人暗殺阻止(乳母車を押す婆さんに変装した女テロリストを問答無用で轢き殺し、民間人を装った仲間を瞬間蜂の巣)から中学生スピリッツ満開。

公道にヘリを降ろして死体ごと回収、地面の血糊を洗い流す手際の良さ(山のような薬莢は放置かい!)。さすがソルジャー。

テロリストも負けておりません。プルトニウム輸送車をランチャーで襲撃。護送車・牽引車大爆発、運転手火達磨。

雪山のスキー・ジャンプ大回転マシンガン乱れ撃ちも素敵でしたが、白眉はポルシェ911によるベルリンの壁超えハイジャンプ。この絵だけで合格です。

出演者の注目はアメリカと繋がりのあるKGBエージェントを演じたクラウス・キンスキー(出番はスキー場の数カットのみ)。

監督のインタビューによると、予算が余ったので急遽交渉(端役ですがプライドを傷つけない金額を提示)して出演してもらったそうで。

撮影中は女という女にちょっかい出しまくり、“何か”を強調するために白のぴっちぴちスキー・ウェアをチョイスし、返さず着たままどこかへ消えたそうです。

音楽はタンジェリン・ドリーム。シンセの執拗なリフレインが緊張感を高めると同時に映画の印象を地味ぃにしています(笑)。