一体何本のビール瓶が砕け散ったのだろう。そして幾つの頭がカチ割られたのだろう。
そのリズムの心地良さは「ああ、俺も誰かの(あいつの?)ドタマカチ割りてぇ」などと危険な夢想をしてしまう程麻薬的な刺激。
実録でも任侠でもない五社やくざ。破綻なき混沌。
「暴力街」(1974年/五社英雄監督)
組の発展のために体を張って御勤めを果たしてきたら、組は合法的株式会社に。武闘派は斬り捨てられ配下は散り散り。おまけに自分の女は組長の女房に納まっていやがった。
銀座の一等地のクラブを手切れ金に足を洗った男(安藤昇)、組に留まったものの会社の歯車になりきれない男(小林旭)。
自分たちを駒として使い捨てた組に一泡吹かせるために、関西組織との抗争を演出するはぐれ者たちと事態の収拾を図るために暗躍する殺し屋コンビ。
各々のキャラ立ちが良く、結構入り組んだ話なのに展開に迷いがありません。
組長さん、高田繁司という人が演っているのですが、声がどう聞いても森山周一郎(笑)。吹き替えかよ!
終盤になってようやく登場する菅原文太がいい。
拳銃の密造を生業としているのですが、『刺激が欲しい』という理由で安藤のカチコミに同行。見物人を決め込みつつ、しっかり安藤をアシストして夜の銀座に消えていく飄々とした男を楽しげに演じています。
ニワトリがぱんぱん流れ弾を喰らって爆発(?)していく中で繰り広げられる安藤と小林の銃撃戦はとってもジョン・ウー的でありますが、どこか「狼は天使の匂い」な手触りも。
原案は五社さんで脚色は「徳川いれずみ師 責め地獄」「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」の掛札昌裕。
実録にも着流しにも食傷している方にお薦めです。