『ゴッズ・ポケットの男たちは単純だ。
働き、野球を観戦し、結婚して子供を持つ。子供も町を出ない。
ほぼ全員が盗みの経験者で、子供の頃、人の家に放火している。
戦うべき時、われ先にと逃げ出す連中だ。
イカサマが好きで、親は子供を殴る。
何があっても町を離れないし、誰も変わることはない』
この冒頭ナレーション(地方紙―恐らくゴッズ・ポケットで唯一読まれている媒体―のコラム)が世界観の全て。
敢えて付け足すなら「年長者は敬え」「人種差別は許さない」「よそ者は出ていけ」。
それがゴッズ・ポケットの掟。
「ゴッド・タウン 神なきレクイエム」
(2014年/ジョン・スラッテリー監督)
とりあえずこの放題付けたアメイジングDCの担当者と「裁かれる街」とかいう副題付けたWOWOWの担当者は減俸。
そんな社会派もどきの重たい内容じゃないです。
アメリカの片田舎(本作の場合、フィラデルフィア郊外。撮影場所はニューヨーク南部のヨンカーズ)ならどこにでもあるであろう労働者の町を舞台にした駄目な人たちの織り成す駄目な日常を描いた“ドン詰まりのコメディ”です。
精肉をトラックごとかっぱらう等の軽犯罪(?)で生計を立てているミッキー(フィリップ・シーモア・ホフマン)と相棒(肉屋。カミさんは花屋)のバード(ジョン・タトゥーロ)。
ある日、ミッキーの再婚相手ジーニー(クリスティナ・ヘンドリックス)の連れ子レオン(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。常にナイフを振り回していきがっている厄ネタ小僧)が職場(工場)で死亡。
扱いは事故死。ジーニーは裏に何かあると疑い、真相を探ろうとしますが工場の作業員たちは頑なに口を閉ざし…と書くと社会派ミステリーになっちゃいますが全然違います。
真相なんか最初から明かされていますし、真実に迫るサスペンスがあるわけでもありません。
ミッキーは葬式の金が工面できず(カンパの金も競馬でスり)、レオンの死体を自分の冷凍車に積み込んで持ち運ぶ破目に。
地方紙のコラムニスト(リチャード・ジェンキンス)はジーニーに一目ぼれ。レオン事故死の真相究明を口実に猛アタック。
ダイナマイトボティの人妻は好きですか?
フリーダムな人たちがフリーダムに生きる(そして死ぬ)様子を楽しみましょう。
印象一番は花屋やっているバードの奥さん。最後に美味しいトコ全部持ってっちゃいます。フリーダムの頂点(笑)。
フィリップ・シーモア・ホフマンは本作が遺作。
替えの利かない役者さんのひとりでした。改めてご冥福を。
★ご参考
★本日のTV放送【17:58~BSテレ東/水曜映画館】