『なぐ、早苗ちゃんの試合、ちゃんと見てた? 引き分け? はぁ? 勝つ以外ある?』
秘密兵器先輩は本当に秘密兵器先輩でした。
「もういっぽん!/第10話・勝つ以外ある?」(2023年3月12日深夜テレビ東京放送/内藤大介演出)
金鷲旗。未知まさかの3人連続一本勝ちで2回戦に駒を進めた青葉西高。
2回戦の相手は山口の錦山高校。1回戦の勢いそのままに先鋒撃破、次鋒とフルタイム闘って優勢勝ちを収めた未知。中堅で出てきたのは…
山口県大会個人戦78キロ超級2年連続2位の実力者、ポイントゲッター・堂本恵(どうもと めぐみ)。
組んだ瞬間、マッハ1本。気が付けば大の字。
『まずひとり』
おお、これってエヴァ旧劇場版「Air/まごころを君に」で量産機9体を3分半で殲滅しようとするアスカの台詞『Erste(エーステ/ひとつめ)』を思わせるボディカウントですね。
青西の次鋒は早苗。力任せに振り回されて技を仕掛ける余裕もなく「技あり」、そして「指導」。
ここで早苗は体格差をものともせず寝技攻撃。
寝技なら指導はとられない。フルタイム闘って相手の体力を消耗させる時間稼ぎ、と誰の目にも映りましたが…。
≪未知が教えてくれたんだよ、立ち技は結局センスに左右されるけど、寝技は努力の量が成長に比例する。頑張った分だけちゃんと強くなるって≫
『違う…時間稼ぎじゃない。ネオ早苗…諦めてない!最初からずっと…』
本気で勝つつもり。本気で取るつもり。一本を。
押さえ込みに入って10秒。技あり。あと10秒で合わせて1本。しかし、19秒で返されてそのまま押さえ込まれ…。
脱出と10秒経過が同時。合わせて1本負け。
ふたりめ取られて中堅同士。ついに秘密兵器先輩・姫野紬の出番がやってきました。
『…3人目』
『…気、早ぇよ』
何この凄み。開始直後に飛びつき腕十字。早苗がこだわって敗れた寝技、それをより派手な形で敢えて。
その姫野を腕力だけで持ち上げる堂本。
おお、これは長州が猪木の仕掛けたショート・アーム・シザースを腕(かいな)力1本で肩口まで持ち上げたあのシーンを思い出させます。
激しい猛攻を巧みに場外際に誘導してかわし…それらはかつて重ねた出稽古の成果。場外際の勝負は飯能商業で、飛びつき腕十字は新座東高校で…。
チャンスは必ず来る。それまで耐える。
『終盤まで長引いた試合だとさあ、巻き込み系の技で一本取ることが多いぞ、相手のポイントゲッター』
という南雲の情報を信じて。
大きい人あるある…疲れてくると体格で強引に持って行く技に頼りがち。
来た!返す瞬間にこれまでの苦労と葛藤が走馬灯のように姫野の脳裏を駆け巡る演出が泣かせます。
互いに3年、最後の大会。どちらも負けるわけにはいかない試合。
勝ったのは…姫野。
そのまま副将と引き分けて双方無傷の大将戦(青西は4人なので、副将の永遠が事実上の大将)。
相手はインターハイ予選で全試合一本勝ちの実績を誇る小出寧々(こいで ねね)。
オドオドした態度が「はじめ!」の合図で豹変する「ちょっと作った感」のあるキャラ。
緊張感を中堅1本に集中させたかったために、敢えて大将の情報を公開しなかった南雲ですが、その作戦は大正解。
『豹変するのはこっちのエースも一緒だしね』
相手のスピードを冷静にかわして巴投げ1本。青西3回戦進出!
3回戦の相手は…先鋒が1分足らずで5人抜きという驚異の早業で2回戦を終えた昨年度金鷲旗の優勝校、立川学園。
いきなり先鋒がボスキャラクラスの実力者。クライマックスに相応しい対戦相手の登場です。
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★本日3月14日は芦田伸介(1917~1999)の誕生日。
50手前の脂の乗った時期の作品と逝去2年前の作品の2本立てをどうぞ。