デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

勝利万歳!ジーク・ハイル! 意志の勝利

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『我々の前にドイツがある。我々は国と共に歩み、振り向けばドイツがあるのだ!』
『国家が我々に命じるのではない。我々が国家に命じるのだ!』
『勝利万歳!ジーク・ハイル!』

なるほど、これがプロパガンダか・・。

「意志の勝利」

(1934年/レニ・リーフェンシュタール監督)

 

1934年9月4日から6日間に渡って開催された国民社会主義ドイツ労働党(ナチ党)の第6回全国党大会の模様を収めた国家発揚映画。

今回発売されたDVDには、ジャケにも帯にも本編開始前にも「本作を所謂“反面教師”とし、二度とあのような歴史を繰り返してはならないという現代社会への警鐘を云々」という但し書きが付けられています。

嘘です。絶対にそんな事考えていません。しかし、そのような「言い訳」とセットでなければとても発売にこぎつけられなかったのでしょう。

天空から舞い降りる神の如き威厳を湛えるヒトラー。驚喜を以って迎える群衆。

闇の中、鉤十字を照らし出すサーチライトとスモークを背にした親衛隊のシルエット。

16台のカメラと100人を超えるスタッフ。全てが一発撮りとは到底信じ難い計算されつくしたショットの数々。

天賦の才を持った32歳(当時)の女性監督は、以後ナチ協力者の烙印を押され、その力量を世に問うことなく長い晩年を過ごします(2003年9月8日没。101歳!)。

この映画には係っていません(むしろ積極的に監督の邪魔をしていたらしい)が、私の注目はヨーゼフ・ゲッベルス国民啓蒙・宣伝大臣

販促や広告・宣伝に携わった事のある人で彼の名を知らぬ者はいないでしょう。

チラシの色使い、キャッチの独創性、メディア(ラジオ)の普及・活用からオリンピックの政治利用まで、プロパガンダの天才」と謳われた一人電通男。

正直あまり頭が良さそうには見えない党幹部の中にあって猛禽類を思わせる眼光と鋭角的な顔立ちは「俺はインテリゲンチャだぜ」オーラが満開。

『権力を得るために武力を頼みとすることも結構でしょう。しかし、より望ましい方法は、常に国民の心を掴み、惹きつけて離さないことです』

この映画、ナチのプロパガンダだって事だけで封印されていましたが、「国民の創生」や(真意をたくみに隠蔽しているという意味でより悪質な)「フォレスト・ガンプ」がOKでこれが駄目ってのはどうも釈然としませんね。

※参考:「サブリミナルより悪質なプロパガンダフォレスト・ガンプ」→2009年10月1日