目玉焼きを作りつつ、弾頭鋳造。
コーヒーを淹れつつ、火薬充填。
手作り銃弾を装填して、フライパン洗って、いざ出勤。
フィルム・ノワールの始まりです。
「真夜中の刑事」(1976年/アラン・コルノー監督)
原題は「POLICE PYTHON 357」。主人公フェロー警部(イヴ・モンタン)の愛銃パイソン357マグナムです。
家族無し。友と呼べる者も無し。信頼できるのはこのパイソンだけ。
そんな男が惚れた女シルビア(ステファニア・サンドレッリ)は上司である署長ガネイ(フランソワ・ペリエ)の愛人。
ただでさえややこしい関係なのに、ちょっとした勢いでガネイはシルビアを撲殺。運の悪いことに、全ての状況証拠がフェローに都合の悪いものばかり・・。
オープニングは傑作を予感させるに十分な出来なのですが、後がどうも。
まず、シルビアって女がどう見てもただの厄ネタ。
元々ガネイはシルビアと別れようとしていたんだから殺意なんかある訳無し。女がいらん挑発しなければこの実直な(エゴイストではありますが)男が道を誤る事もなく。
ついでにフェローがガネイを○○ことも、フェローが自らの顔を○○ことも、ガネイの妻(シモーニュ・シニョレ)が○○することもなかった訳で。
最悪な女です。
細かい描写で気になったのが、ガネイのシルビア撲殺シーン。
元々殺意がなかったにしちゃ十数発は殴りすぎでしょ。衝動殺人なら1発で十分。
で、普通、鈍器(灰皿)で頭部殴打されたら最初の一発で倒れます。直立不動で全発受け切るなんて考えられません。ただ“殴っている”という記号的演技(出来の悪い「サイコ」のシャワーシーン)。もうちっと立ち位置とかアングルとか考えた方が良いのでは。
また、観ている側は人間関係が全部分かっているので、意外な発見や展開というものがありません。で2時間越えは冗長過ぎ。
公称118分ですが、DVDのランニングタイムは127分。PALマスターなら早回しになって短くなるはずですが・・。
シングル、ダブルとパイソン撃ちまくる射撃練習シーンは身震いする素晴らしさ。
編集し直して30分切り詰めたら大傑作になっていたかもしれません。惜しいなあ。