金持ちヒーローのキャラ設定は実に難儀。
ブルジョアぼんぼんの自己完結型ひとりよがり正義を勧善懲悪に軌道修正するにはちょっとした工夫が必要です。
バットマンは、メンヘラ並みに屈折した人格が、悪役との境界線を曖昧にしてダークヒーローとしての品格を保っていました。
アイアンマンは、武器商人という職業を恥じて自らのケツを拭くマッチポンプ型営業で、逆説的な正義を体現していました。
しかるにこいつは・・どう見ても単なる馬鹿にしか・・。
(2010年/ミシェル・ゴンドリー監督)
昼は新聞社のぼんくら社長(創業者の不肖の息子)、夜は相棒カトーと共にハイテク機器とコスプレで武装した正義のヒーロー、グリーン・ホーネット。
元々はユニバーサルで、ジョージ・クルーニー×ジェット・リーで企画されたものが、権利がミラマックスに移って、ジェイク・ギレンホール×ジェット・リーになり、更にセス・ローゲン×チャウ・シンチー(この時点では監督もチャウ)になったものの、チャウが降板して、セス×ジェイ・チョウに落ち着いた二転三転訳あり映画。
チャウ・シンチー版が観たかったなあ(カトーを演じるにはちっと歳喰ってますが)。
コメディで行くのなら、「オーガズモ」並みに弾けてくれればいいのに、中途半端にバットマンなカラーを残すもんだから、ケツの座りが悪い悪い。
クンフーの達人にして発明の天才、カトー(ジェイ・チョウ)が話のキモなのに、このキャラが弱い。
ガラの悪い場所で育ったと言う割には悪事に精通しているようには見えませんし、貧乏人としての屈折もありません。
身体能力が突出している設定で、そういうシーンもありますが、ジェイ・チョウ自身の身体能力をアピールする撮り方になっていないのが致命傷。
イラストノートにブルース・リーを描いていたり、ワンインチ・パンチ・リスペクトな貫き手を使ったりと“くすぐる”要素はあるのですが、「ジェイ・チョウすっげー!」なシーンは結局見当たらず。
熟女の域に入ったキャメロン・ディアスを巡る恋の鞘当とか激しくどうでもいいです。
議員の恫喝を録音したUSBをネット配信するためにブラック・ビューティ号かっ飛ばして新聞社へ…ってちょっと待て。ハイテク機器満載の車にモバイルひとつ置いてないのかよ。
アル・ハート版グリーン・ホーネットのテーマ(タラがキルビルで使った奴ね)がいつ流れるのかと待っておりましたが、ラストにちろっとかかっただけ。
全てのピントが少しずつズレている、何とも残念な作品でした。
※参考:「おーいケント、ユタが馬鹿にされてるぞ!オーガズモ」
→2008年7月13日