『お前らは男と女でそのようなデカルチャーをしているのか?』
観る度に何故かこの台詞で笑ってしまいます。
公開から数えて29年。色褪せるという事を知らない歴史的モニュメント。
先月ご紹介した「劇場版とある魔術の禁書目録/エンデュミオンの奇蹟」が個人的に「うーむ」な出来だったので、元祖歌姫で口直し。
50万周期に渡って戦闘を繰り広げている巨人男性の戦闘種族ゼントラーディと巨人女性の戦闘種族メルトランディ。
西暦2009年(既に過去の話だ!)、両者の戦いは地球に及び、ゼントラーディ軍の放った一撃で地球は壊滅状態に…
間一髪、難を逃れた巨大宇宙戦艦SDF-1マクロスはフォールドシステムの誤動作で冥王星付近まですっ飛ばされてしまったので、その後地球がどうなったのか分からないまま、地球への帰還航海を続けている…。
というスケールでかいにも程がある世界観。
太古の昔、戦うことしか知らない巨人たちを作った種族の末裔が地球を訪れ、人類の祖先を作った、という設定がまた遠大。ここだけで某巨匠のひとりよがりSF超大作を凌駕しています。
因みにマクロスに登場する攻撃空母の名前は「プロメテウス」。
お話の中心は、アイドル歌手リン・ミンメイ、バルキリー隊パイロット一条輝とその上官・早瀬未沙による三角関係になりますが、キモになるのは巨人達が知らない“文化(プロトカルチャー)”の存在。
“戦闘以外の創造的活動”である文化、とりわけ歌が巨人達の戦闘本能に揺さぶりをかけます。
1曲の歌が三つ巴の星間戦争を終結させる…この大風呂敷に説得力を持たせる事ができるかどうかが、本作最大の見所です。
結果は観た人ならご存知の通り。
溜めに溜めたその歌と共に描かれる戦闘シーンの素晴らしさ(冗談じゃない密度と動き)。その渦中、ゼントラーディ軍からの「これより旗艦を援護する」という打電。
『我々にも文化は蘇るのか?』
比べるのもどうかとは思いますが、「砂の器」のクライマックスに匹敵する興奮でした。
『結局何だったのかしら、あの歌』
『ただの流行歌よ』
『流行歌?』
『何万年も昔に異星人の街で流行った、当たり前のラヴソング』
奇蹟の歌声などではない。歌そのものが奇蹟。やはり「エンデュミオン」のスタッフは本作100回観直しの刑です。