3年の時を経て立ち上がったノートPC。
メーラー起動と同時にダウンロードされる未読メール。
50…100…300…600…1,000…1101!
全て報瀬が母・貴子に宛てて送ったメール。それは貴子が間違いなくそこにいた証。そして、間違いなくもういない事の証左。
報瀬は母宛のメール送信を逡巡しているのだとばかり思っていましたが、送っていたんですね。恐らく毎日。3年間。欠かすことなく。
3年前に停まった空白の時間が遡って埋まっていく。メールのダウンロード・カウントが上がっていく、それだけの描写がこんなにも響くとは…。
(2018年3月20日深夜BS11放送/北川朋哉演出)
念願叶った南極の地。しかし報瀬の心は晴れない、弾まない、踊らない。
『私ね、南極来たら泣くんじゃないかってずっと思ってた。これがお母さんが見た景色なんだ。この景色にお母さんは感動してこんな素敵な所だからお母さん来たいって思ったんだ。そんな風になるって…でも実際はそんなこと全然なくって何見ても写真と一緒だくらいで…』
あとは母が消息を絶った場所に行くだけ。
『でもそこに着いたらもう先はない。終わりなの。もし行って何も変わらなかったら私はきっと一生今の気持ちのままなんだって…』
南極目指して溜めた100万円。何を積み上げて来たのか全て覚えている。
『引っ越し…レジ…清掃…清掃…新聞配達…レジ…引っ越し…交通量調査…清掃…工場…工場…レジ…配達…レジ…』
陸内旅行の参加を躊躇する報瀬。全て報瀬の意思に委ねた仲間たち。
何故再び南極の地を踏んだのか?という報瀬の問いに隊長・吟は応える。
『私が来たかったから。貴子がそうしてほしいと思っていると私が勝手に思い込んでいるから。結局、人なんて思い込みでしか行動できない。けど思い込みだけが現実の理不尽を突破し、不可能を可能にし、自分を前に進める。私はそう思っている』
時速5kmの雪上車。着いた場所は南極チャレンジ1次隊天文観測所。貴子が消息を絶った場所。
その土台を見上げ静かに涙する吟隊長。流れ落ちる吟の涙を見て尚心動かない報瀬を見て3人が走った。
なんでもいい。一個でもいいから…。
『1個でいい!報瀬ちゃんのお母さんが確かにここにいたって何か―』
あった! 思い出の写真を張り付けたノートPC。間違いなく貴子のもの。
3年間放置されたPC。立ち上げた瞬間…。
あーもうこんなん泣くに決まってるやん。こんな涙腺決壊したのCLANNAD以来だわ。
<Dearお母さん、友達ができました。ずっと1人でいいって思っていた私に友達ができました>