トラッシュの殿堂というものがあるのなら、本作は間違いなく永久保存指定でしょう。
これに比べたら「宇宙から来たツタンカーメン」なんか超真っ当な芸術映画です。
「ザ・ダーク」(1979年/ジョン・バッド・カードス監督)
ロサンゼルスで起きた連続猟奇殺人事件。
犠牲者は1晩にひとり。浮浪者を装っているが、殺した相手は首ちょんぱの力持ち。
果たして犯人の正体は…何と宇宙人でした! 以上おしまい。
何が凄いって「宇宙人でした!」以外一切の説明が存在しないこと。
何が目的で地球に来、何のために人間狩りを始めたのか。何故一晩にひとりなのか、目から飛び出す怪光線(いや正確には怪光弾か)は何か、首をもぐことに理由はあるのか、といった当然の疑問を『いや、だってほら…宇宙人だし』の一言で納めようとしています(ある意味天晴れ)。
企画当初の監督はトビー・フーパーだったようですが製作とモメて降板。
引き継いだジョン・バッド・カードスは「巨大クモ軍団の襲撃」みたいな佳作も撮っていて決して先天性駄目監督という訳ではないのですが、本作はどうにもこうにも。
会話が不自然な上に字幕がこなれていないので観ていてイライラが募ります(この頃はゾンビを亡者と訳していたんですねえ)。
次の殺人を予言するオカルト婆さんが登場しますが、予言された相手が襲われる前に別の犠牲者出てるし(“次の”殺人じゃねーじゃん)。
そもそも何であの婆さんに次の犠牲者が透視できるのよ。相手は宇宙人だよ。更に言えば何で宇宙人はオカルト婆さんの存在を察知できたのよ。で、直接襲いに来るのかと思えばポルターガイスト現象って…。
という突っ込みも空しくなるくらい脚本・演出・特撮の全てが赤点。
ただ、今回観たVHSが、トリミング無しのシネマスコープサイズで収録されていたのは花丸。偉いぞ、東映ビデオ。